鉄道路線から集落までの距離がだいぶあり、定期利用者がまったくいない秘境駅を観察することはその地域の歴史を知る絶好の機会といえます。なぜなら、時代とともに古きものは新しいものに変わり、日本の歴史的建造物を残しても、改修工事を行うため、建設当時と同じかどうかは判断できません。秘境駅は言わば、人に見捨てられた場所です。そこには駅舎、待合室、周囲の建造物、未舗装の林道、荒涼とした原野などが人の手に触れずに存在しています。
それらは時間とともに劣化していますが、人が見捨てる前の時代のまま残っています。その当時の日本地図と鉄道路線図を見ながら、周辺を観察することで、当時の文化に接することができます。
最近では出版物が発売されることで、鉄道ファンだけでなく多くの人に注目されるようになりました。それによって、鉄道会社が旅行会社と連携してパッケージツアーを企画したり、臨時列車を運行するほどブームになり、人に見捨てられた場所から人が集まる場所になりつつあります。ただし、人の手に触れずに残っていることに価値があるので、日本鉄道の文化遺産だと認識して、あくまでも観察するだけにとどめるようなマナーが必要だといえます。